SSブログ

同志の日 [alternative]

10月30日
この日は待ちに待った台湾プライドパレードの日。しかしここのところ風邪気味で調子が出ないし、雨模様の日が多いので、いろんな意味で心配していた。

おまけに。
この日は色々なイベントが重なってしまっている。台湾大学演劇学部のシンポジウム、プライドパレード、そしてWSHの講演の三つ。まずは午後から夕方までのパレードを優先して、シンポは午前中だけの参加(失礼)、WSHの講演は夜7:30からなので、パレード後のイベントの様子をみて移動すればよい。でも疲れそうだな…。

さて、6時半起きで中研院を出発し、朝食屋でハンバーガーとミルクティーを買って一路台湾大学へ。途中、バスに乗り換える忠孝新生駅前の公園で朝食を食べる。8時半には台大に到着したけど、いつものように行動の遅い僕は、シンポの参加申し込みをしていなかった。そのため入場はかなったけれど、論文集はもらえず。コメンテーターとして参加したLXHを通じて、主催者側になんとか余分に分けてもらって問題は解決。Q教授の『怒吼吧!中國』に関する報告を聞いてから台大を退散。それにしてもQ教授は、偉くなっても院生が研究に対するような情熱を失わない。心から敬服する。しかも性的マイノリティにもすごく理解がある。僕が先生に「台湾大のシンポとLGBTのパレードが同じ日なんですよお」と困ったように話したら「オレの話を聞いてから行けばいい。間に合うだろ?論文集をもらえば大丈夫!」と笑う。

ゲイやレズビアンの友人たちとの待ち合わせは、パレード出発会場のそばの国家図書館前。雨が時折降ったり止んだりを繰り返す嫌な天気だったが、スタート地点の凱達格蘭大道は徐々に熱気を帯びてくる。今年は選挙を控えていたこともありテーマは「OUT & VOTE 投同志政策一票」。同志政策には無関心であった台北市長候補者が直前にパレード参加を表明するなど、選挙運動に利用されるほど台湾の性的マイノリティのコミュニティは無視できない規模と厚みを備えていると言えそうだ。

lgbt パレード.jpg待ちくたびれた2時頃にようやくパレード開始、虹のひとつひとつの色にテーマをもたせ、そのグループごとに発進。僕はもう何色でもいい、とにかく「水男孩(water boys)」のいる色に合流して(笑)、二二八平和公園を左手に眺めつつ公園路を歩いていく。可愛らしく、かっこよくもあるたくさんの人々を目の前にして、そうか、パレードとは単に政治的なスローガンを叫ぶためだけのものではないな、このお祭りをみんなで楽しみ、そしてあわよくば「目の保養」もできるんだな、と僕は思った。そう、そういう不埒さは実に人間らしい、僕らは生身の人間なのだ。

その後、公園北側の襄陽路を西へ進み、衡陽路を歩いて西門町へ。このあたりで既にかなり疲れてしまった僕ら中年隊は、路地裏のお店で人形焼を買って食べる。この人形焼、男性器の形をしているのが売りで、中にソーセージが入っているバージョンもあって御愛嬌。女の子たちも買って美味しそうに食べていた。

一休みしてまた隊伍に戻り、ちょうど歩いてきた欧米系のドラアグクイーンのオネエさんたちとうきうきしながら行進。写真を要求されるたびに「可以、没関係(イイワヨ、キニシナイデ)」と中国語で答えているのがいかにも楽しく、誇らしい。隊伍は暮れなずむ台北駅の前を、バスを乗り降りする人々を掻き分けるように進み、また公園路を通って、ゴールの出発会場へと帰ってきた。

そこからまた特設ステージでのパフォーマンス、様々な性的マイノリティの人々、とりわけ障害をもつ人々、そして今度の地方選に出馬する若きLGBTの候補者たちが登壇し、喝采を浴びる。
そしてオオトリの張恵妹こと阿密特の登場で、会場はさらに熱を帯びる。LGBTにフレンドリーなことで知られる阿密特は、歌でもそのことを表明する。たとえばそれは「彩虹」である。
阿密特は僕らに声を合わせるように、と次のように叫んだ。

「我們是同志!我們很驕傲!(わたしたちは“同志”だ! わたしたちは誇らしい!)」

同志の“同”は同性愛を示してはいるが、ここでの“同志”は、社会運動体としてのLGBT全体を緩やかに連帯する言葉として機能しているのだろう。孫文のパロディから生まれたとされるこの半ば諧謔に満ちた言葉は、いままさに力強さを備えたしなやかな言葉として生まれ変わったのである。日本に、それにふさわしい訳語がないのが口惜しいと思うのは、僕ばかりではないだろう。

夜、WSHの講演が無事に終わって、スタッフと共に火鍋を食べに行った。CP書店の担当者はふたりともゲイで、それぞれパートナーも一緒に食事に参加してくれた。僕を含めシングルのゲイも一緒に、なごやかに宴は進む。この自然な安らぎはいったいどういうことだろう。もちろん全員ゲイだということもあるけれど、女の子が一緒にいてもべつにぎこちない感じはしないだろう、そういう自然さである。

異性愛者と非異性愛者の垣根がない、あるいは低いという環境が、全てではないにしても台湾には確実にある。そしてそういう環境にいられる自分がとにかく誇らしく感じられるのである。
タグ:台湾 LGBT
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

台北観劇指南(基礎編)曖昧な体温 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。